OpenAI は、最新の動画生成モデル「Sora 2」に関し、初期には権利者が “オプトアウト” 方式で利用を除外できる仕組みを採っていたが、CEO が“オプトイン”に近い制御を導入する意向を示した。著作権利用の扱いをめぐる方針転換として、業界からは関心と懸念が集まっている。
Sora 2 の著作権ポリシー:オプトアウト方式から批判を受け
Sora 2 は、テキスト指示から動画と音声を生成できるマルチモーダルモデルである。そのリリース当初、著作権保護されたキャラクターや作品について、権利者が明示的に除外を申請しない限り、生成対象となる “オプトアウト(排除申請型)” 方式が基本となっていた仕様である。
このため、特にアニメ・コミック作品や人気キャラクターを無断で扱われるリスクが指摘された。クリエイターや権利管理団体からは、「既存作品の無断利用につながる」「作品管理のハードルが高い」といった批判が上がった。
方針転換の示唆:オプトインに近づける制御を導入
これらの反発を受け、OpenAI の CEO Sam Altman は、権利者が自身のキャラクター・作品の生成を許可する “オプトイン(同意型)” に近い制御を導入する可能性を示唆した。具体的には、権利者が生成許可の範囲を細かく指定できる制度を設け、許可しない作品は生成対象から除外する運用へ移行する構想である。
このような制御強化の流れは、創作者の権利尊重と AI 創作の拡張性を両立させようとする試みとして評価されている。
制御強化に向けた課題と紛争リスク
この方針移行には複数の難点も存在する。
- 対象の網羅性と管理負荷:世界中の作品・キャラクターを把握し、許可設定を行う負荷は極めて大きい。見落としが発生すれば、無断生成が生じるリスクが残る。
- 許可・拒否基準の曖昧さ:何をもって許可と見なすか、あるいは拒否扱いにするかという基準設定が難しい。加えて、クリエイターや出版社との交渉基盤や信頼体制も求められる。
- 収益分配の設計:許可を与えた作品が生成に使われる場合、権利者に報酬還元をどう設計するかが問われる。無償利用との線引きが曖昧になる可能性もある。
意義:AIと著作権の新たな均衡点
Sora 2 に対するオプトイン制の導入示唆は、AI生成とクリエイティブ作品の著作権との衝突を調整する試みとして注目される。AI の創作力を尊重しながら、既存作品の権利を保護しようとする試金石になり得る動きだ。
ただし、制度設計や運用ルール次第では、権利者・AI 開発者双方にとって不利益を生む可能性もある。今後の実際の運用方針発表や制度整備が、AI時代の著作権ルール形成における重要な転換点となるだろう。