OpenAIは開発者向けイベント「DevDay 2025」を開催し、ChatGPT上でアプリを実行できる新機能「Apps in ChatGPT」や、エージェント開発環境「AgentKit」、次世代AIモデル「GPT-5 Pro」「Sora 2」などを発表した。これらの発表は、ChatGPTを単なる対話AIから汎用プラットフォームへ進化させる大きな転換点となる。
Apps in ChatGPT:チャットをアプリの起点に
今回の目玉となった「Apps in ChatGPT」は、チャット画面内で外部アプリを呼び出し、直接操作できる仕組みだ。ユーザーはチャット上でタスクを指示するだけで、予約、画像編集、学習、音楽再生といった操作をアプリを介して完結できる。
開発者向けには「Apps SDK」が提供され、ChatGPTと連携するアプリを自由に構築できるようになる。将来的には収益化や審査制度も整備される予定であり、ChatGPTが“アプリプラットフォーム”として機能する環境が整いつつある。
AgentKit:エージェント開発を統合する環境
OpenAIは同時に、AIエージェントの構築を支援する「AgentKit」も発表した。これは、エージェントの設計から実行、評価、運用までを一貫して行える開発ツール群である。
従来は個別ツールやAPIを組み合わせて開発していたが、AgentKitではモデル、タスク、UI、学習データなどを統合的に扱える。これにより、より複雑な対話エージェントや自律型タスクAIを迅速に開発できる基盤が形成された。
新モデル群:GPT-5 ProとSora 2
DevDayではAIモデルの進化も大きな注目を集めた。GPT-5 Proは応答精度と文脈処理能力を高めた改良版であり、企業向けの長文処理や複合タスク対応を想定している。
さらに「Sora 2」は、映像と音声を同時に生成できるマルチモーダルモデルとして登場した。テキスト指示から動画と音声を統合的に生成できる点が特徴であり、クリエイティブ制作やインタラクティブ体験の分野で活用が期待される。
また、リアルタイム音声対話に最適化された軽量モデルも発表され、ChatGPTの即時応答性能を高める基盤が整備された。
インフラとハードウェア戦略
OpenAIはモデルの強化に合わせて、インフラ拡充にも取り組んでいる。AMDとの提携により高性能GPUの供給体制を確保し、今後の負荷増大に対応する。
さらに、デザイナーJony Iveと共同で開発中とされるAIデバイス構想にも言及があり、感情的な対話体験を重視したハードウェア設計が進められている。画面を持たないセンサー中心のインターフェースが想定されており、AIとの自然なコミュニケーションを実現する試みとみられる。
ChatGPTの「プラットフォーム化」が進行
今回の一連の発表は、ChatGPTを「単なるチャットツール」から「OS的プラットフォーム」へ変革する布石と言える。アプリ実行、エージェント開発、モデルAPI、音声生成、映像生成といった要素を統合することで、ChatGPT自体が“次世代の作業環境”になりつつある。
ただし、今後の普及にはいくつかの課題も残る。
アプリ間のデータ共有やプライバシー管理、開発者審査制度の明確化、レスポンス速度の最適化など、実運用面での整備が求められるだろう。
それでも、DevDay 2025はOpenAIが「サービス企業」から「プラットフォーム企業」へと進化する転換点として位置づけられる。